本文へスキップ

広島大学 大学院 先進理工系科学研究科 先進セルロース材料共同研究講座

植物成分の活用技術SERVICE&PRODUC

ヒノキチオール ヒバ

  ヒノキチオールという物質の名前を聞いたことがあるかもしれません。そのイメージとして、木材のヒノキ(檜)に含まれていている抗菌成分である。檜風呂は、そのおかげで体にも良い・・・・等の話もあるかもしれません。しかし、日本で身近にあるヒノキ(ヒノキ)には、ヒノキチオールはほとんど含まれていないとされています。ヒノキそのものに抗菌性などがないというわけではありません。ここでは、ヒノキチオールのことについてのみ記載しています。
 ヒノキにヒノキチオールが含まれていないのに、なぜ、ヒノキチオールというのか。ヒノキチオールの名前は、それが発見された木の名前には基づいています。ヒノキチオールは、戦前に日本が台湾を統治していた時代の、1936年に台北帝国大学の野副哲男(のぞえてつお)先生が、タイワンヒノキから見出したことで、ヒノキチオールとなりました。現在、台湾ではタイワンヒノキは大切に保護されています。日本では、ヒノキにはヒノキチオールはほとんど含まれていませんが、青森県を中心に分布している「ヒバ/青森ヒバ」は、その精油に約2パーセント、ヒノキチオール(類似物質のβ-ドラブリンも含む)が含まれたています。青森県では、この青森ヒバから抽出した精油を活用した様々な製品が開発・販売されています。
 ここで、ヒノキチオールの構造を見てみましょう。よくみると真ん中の形は、7員環です。ベンゼン等の芳香族の基本は、6員環の六角形です。7員環の物質は、それほど一般的ではありませんが、天然香料などに含まれていたり、工業的にはシクロヘプタンとして溶媒等として使われています。このヒノキチオールの7員環の構造は、「トロポロン環」と呼ばれています。この構造を持つ物質は、生理活性があり、ヒノキチオールも幅広い抗菌性を発揮します。うがい薬で、アズレンという名称のものが販売されています。これは、アズレンスルホン酸塩が含まれているためで、この物資も7員環構造があり、炎症抑制作用が知られています。
 青森ヒバは、木材・製材としては、付加価値が高く、その切ったり、削ったりした際の加工屑や木粉も、そのまま廃棄するのはもったいないです。精油抽出原料としてや芳香剤的な利用もされています。青森ヒバは、とても特徴的な香りがします。我々の講座では、木粉やパルプ等のセルロース原料を、ポリプロピレン等の趣旨と複合化して、高性能材料を開発する技術開発を行っていますが、専任教員が、前職時代には、企業と共同研究して、ヒバ木粉を用いた、抗菌性木粉複合材料を開発し、特許も取得しました[特許3778881号/登録・平成18年3月10日]。この特許権は、10年以上前に消滅していますが、以下に紹介しておきます。青森ヒバ木粉とポリプロピレン(PP)を機械的なせん断力も活用して複合化しました。成形したシートの抗菌性をテストしたところ、大腸菌はほぼ死滅しました。複合化やシート成形では、加熱しますが、ヒノキチオール等の抗菌成分は保持されていたことが分かりました。

ヒノキチオール ヒバ

柑橘が含有するペクチンの機能を利用する

Mandarin Citrus nanocellulose

 「基礎解説」・「木材組織とセルロース」・「植物の成分」にも書きましたが、木材等では、その成分の半分近くがセルロースです。一方、柑橘類の果皮等は、セルロースを含有していますが、多い成分はペクチンです。果物類には、ペクチンが多く含まれています。水溶性の天然多糖類です。熱や酸の影響でゲル化してゼリー状になります。この特性を利用したのが、ジャムです。植物体では、細胞の間を埋めて、緩やかに接着させる作用があると言われています。ペクチンは、ヘミセルロースとは異なるグループですが、その分子構造は、上図に示したように、セルロースに類似しています。しかし、セルロースとは6位が異なる構成糖が、鎖状につながっています。6位がカルボキシル基になっているガラクツロン酸とメチルエステルになっているガラクツロン酸メチルから構成されています。この並び方等は、植物の種類や分離方法等でも変わります。ペクチンは、カルポきしる基を持った多糖類のため、カルシウムイオン等でキレート構造を作ったりします。
 植物のセルロースの活用技術として、ナノサイズに解繊して得られる「ナノセルロース/セルロースナノファイバー/CNF」の利活用が10年以上前から、各方面で進められています。関心が高い分野は、ナノセルロースの強度特性等を活用する複合材料ですが、セルロースそのものは安全・安心な物質であるため、食品や化粧品分野での展開も進められています。食品等へのナノセルロースの応用では、「食品衛生法」等の厳しい規制があります。
 そのような中で、化学的な処理は一切行わず、機械的処理の工夫のみで得られる「柑橘ナノセルロース」が開発されています。この技術では、柑橘果皮等が含有しているペクチンをあえて残して活用することで、本来は凝集性がとても高いセルロース(ナノセルロース)の凝集を抑制して、分散性の良い特性を発揮させています。ペクチンは、柑橘類等が含有している機能性成分の保持に役立っているようです。
 ペクチンを残して製造した「柑橘ナノセルロース」は、専任教員が、前職時代には、企業や愛媛県と共同研究して、下記のような特許を出願し、登録されています。また、これらの技術を活用した製品は、飲料や化粧品等として、上市もされています。
 
愛媛製紙株式会社・MaCSIE®(マクシー)・・・柑橘ナノセルロース実用化例

柑橘ナノセルロースに関しては、学術論文も出しています。
1.S. Hiasa et al., Industrial Crops and Products, Vol.62, pp.280-285 (2014).
2.S. Hiasa et al., Journal of Fiber Science and Technology, Vol.72, pp.17-26 (2016).
3. 熊谷明夫 他、オレオサイエンス、21巻、11号、pp.455-462 (2021).

Mandarin Citrus nanocellulose

植物の細胞壁構造を利用する

植物細胞壁構造

  植物が持つ機能的成分の利用ではありませんが、植物の細胞壁構造を利用することで、特徴的な素材を造ることができます。「基礎解説」「木材組織とセルロース」「木材組織の基本構造」にも記載していますが、木材等の植物組織ではセルロース分子の集合体である「セルロースミクロフィブリル」が集合・清掃して細胞壁構造を形成しています。そのため、細胞壁をほぐせば、ナノサイズの繊維である「セルロースナノファイバー/ナノセルロース/CNF」を製造することができます。しかし、植物には簡単にはほぐされないような色々な工夫がされています。近年は、その工夫を上手く壊すことで、セルロースナノファイバーが効率的に製造できるようになり、その特性を活かした材料などの開発が進められています。
 細胞壁は「セルロースミクロフィブリル」の集合体ですが、特徴的な層構造も形成しています。細胞壁は、外側から、細胞間層→一次壁→二次壁、となっています。二次壁はさらに大きくは、S1層、S2層、S3層に分かれています。これらの二次壁では、「セルロースミクロフィブリル」はキッチリと並んでいて、細胞壁の強靱化にも貢献しています。しかし、層構造なので、工夫すると、剥がすこともできます。剥がすことで、薄い扁平状(うろこ状)の粒子を製造することができます。上図の「扁平セルロース粒子」は、細胞壁が1枚剥がれたものと言うよりは、複数の剥離した細胞壁が重なって生成したものと考えています。
 この「扁平セルロース粒子」は、その平べったい形状から、化粧品のファンデーションへの添加物としても利用可能で、原材料メーカーとの連携で、オーガニックコットンを原料とした「扁平セルロース粒子」は大手化粧品メーカーのファンデーションにも採用された実績があります。平べったい物質として、ファンデーションには雲母などが添加されていますが、それらの鉱物よりもセルロースの方が皮脂等の吸収性が良かったようです。
 ファンデーションに利用された「扁平セルロース粒子」の原料は、オーガニックコットンでした。コットンつまり綿の繊維では、木材組織のような構造では無く、中空繊維で壁ではセルロースミクロフィブリルが同心円状かつ少しらせん状に集合して形成されています。[参考:「基礎解説」・「セルロース・複合材料の分析評価」・「コットン繊維と木材パルプ繊維の区別方法」]そのため、適切に処理することで、セルロースミクロフィブリルの層が剥がれて、「扁平セルロース粒子」が得られます。この「扁平セルロース粒子」を製造するためには、添加剤と機械的処理の工夫が必要です。以下に、「扁平セルロース粒子」の製造技術の基本の特許例(既に期限がきて消滅)を示しました。また、コットン繊維から扁平セルロース粒子が生成していく過程の電子顕微鏡写真も示しました。同心円状かつ少しらせん状になったセルロースミクロフィブリルの層が剥がれて行くのが分かると思います。

扁平セルロース粒子

○○○○○

セルロースの結晶性・固体NMR

 ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○ ○○○○○

○○○○○

       



バナースペース